女性の身体は約1ヶ月のホルモン周期によって大きく変動します。特に「生理周期」と呼ばれる期間は、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌バランスが変わり、体調や代謝にも影響を与えています。多くの人は「生理中は筋肉がつきにくい」「運動は控えたほうがいい」と考えがちですが、実はその逆ともいえるのです。
生理中は女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が大幅に低下します。エストロゲンには脂肪を蓄積させたり筋肉の成長を抑制したりする作用があるため、その分泌が下がる生理期間は筋肉がつきやすい状態になると考えられています。つまり、生理中は筋トレの効果を実感しやすいベストタイミングの一つなのです。
女性ホルモンの周期と筋肉の関係
女性のホルモン周期は大きく4つに分けられます。
| 周期 | 期間 | 主なホルモンの状態 | 身体の特徴と筋トレ適性 |
|---|---|---|---|
| 月経期(生理中) | 約1~7日 | エストロゲン・プロゲステロン低下 | 筋肉がつきやすく筋トレ効果が高い。つらければ軽め推奨。 |
| 卵胞期 | 約7~14日 | エストロゲン増加中 | 筋肉がつきにくくなるが、エネルギー代謝は活発。 |
| 排卵期 | 約14日 | エストロゲンピーク | 筋トレ効果がやや低下。注意力や集中力は高まる。 |
| 黄体期 | 約14~28日 | プロゲステロン増加 | 脂肪蓄積傾向。筋肉の成長抑制。体調により変動大。 |
このように、女性ホルモンの影響で筋肉の成長に天秤がかけられるのは大きな特徴です。特に排卵期はエストロゲンのピークで筋肉の成長を抑制しやすいため、筋トレ効果は生理中より低く感じることが多いのです。
生理中でも積極的に運動していいの?
「生理痛がひどい時に激しい運動をするなんて無理」という声もありますが、実際には身体を動かすことで生理痛や不快感の軽減が期待できます。運動をすることで、骨盤内の血流(うっ血)が改善され、筋肉の緊張がほぐれやすくなるからです。
また、体を動かすことで「エンドルフィン」という脳内の鎮痛作用を持つホルモンが分泌されます。これは痛みの感覚を和らげ、気分を高揚させる効果があるため、生理中のだるさや憂うつ感の軽減にもつながります。さらに、運動によってプロスタグランジンの分泌が抑えられると、生理痛の原因となる子宮収縮が和らぐという報告もあります。
ただし、生理中の身体は人によって症状や体調の差が大きいので、「絶対に運動しなければならない」と無理をする必要はありません。痛みが強い日や疲労感がある日は休息や軽いストレッチにとどめるなど、自身の体調に合わせて調整しましょう。
生理中にオススメの筋トレ方法
生理中に特におすすめしたいのが、骨盤周辺の筋肉を鍛えるエクササイズです。骨盤底筋群や内転筋、大殿筋を意識することで骨盤内の血流を促進し、生理痛の緩和やだるさの軽減が期待できます。
代表的な筋トレの一例をご紹介します。
骨盤周りを鍛える立位のかかと上げエクササイズ
1. 立った状態で会陰部に近い太ももの間にクッションや丸めたタオルを挟みます。
2. 内転筋(太ももの内側の筋肉)を意識してクッションを軽く押しつぶすように力を入れます。
3. そのまま両かかとをゆっくりと上げ下げします。かかとを上げるときにふくらはぎ(下腿三頭筋)にも力が入ります。
4. 壁などにつかまってバランスを取りながら行っても構いません。
5. 20回を目標に繰り返しましょう。
この運動で骨盤底筋群、内転筋、大殿筋の強化に加え、ふくらはぎの筋肉も働くことにより全身の血流も促進されます。生理中のつらい症状の緩和に役立つでしょう。
生理中の筋トレで気を付けたいポイント
生理中はホルモンの影響で疲労感が増したり体温が上がったりしやすい時期でもあります。そのため以下の点に注意して筋トレを行いましょう。
- 体調を最優先に:痛みや腹部の不快感が強い場合は無理をせず休養しましょう。
- 軽度の運動から開始:いつもより軽めの負荷や回数で様子を見ながら調整します。
- 水分補給をこまめに:体温変化と合わせて水分不足になりやすいため意識しましょう。
- ウォーミングアップ・クールダウンを入念に:身体を温めながら筋トレ前後のケアをしっかり行うことが大切です。
- ストレスを感じないこと:筋トレが義務感になると逆効果。リラックスできる範囲内で行いましょう。
まとめ:生理周期を味方にする筋トレ習慣
生理中は女性ホルモンの影響で筋肉がつきやすく、実は筋トレ効果を実感しやすい期間です。さらに、生理痛や不快感を和らげるために軽い運動や骨盤底筋群を中心とした筋トレがおすすめです。
しかし、身体の状態や生理痛の程度は個人差が大きいので、「生理中は必ず筋トレをするべき」と押し付けるのは避けたほうがよいでしょう。むしろ、自分の体調に合わせ無理なく続けられる運動を選び、ホルモン周期も参考にしながら筋トレを行うことで、より効率的に健康づくりができます。
ホルモン周期に応じた身体の変化を理解し、快適で効果的な運動習慣を身につけましょう。
