コラム

【エステサロンのM&A】売却の流れ、相場、成功のコツを徹底解説!

近年、美容エステサロン業界では売却や譲渡を行うオーナーの数が増加しています。業界全体の売上げの伸び悩み、店舗数の増加による競争の激化、オーナーのリタイヤや後継者問題など、さまざまな理由によってM&Aを選択する人が増えているようです。

しかし、エステサロンのM&Aは、一般的な中小企業のM&Aとは異なる特殊性もあり、専門的な知識やノウハウが必要とされます。売却価格の相場や、高く売るためのポイントなども、業界特有の事情があるため、しっかりと理解しておく必要があります。

そこで本記事では、エステサロン売却の流れ、メリット、高く売却する方法、最新の業界動向などを詳しく解説します。今すぐにM&Aを考えていない方でも、将来的に選択肢の一つとして知っておくと良い内容となっています。

 

エステサロンM&Aの成立までの流れ

エステサロン売却の流れは、一般的なM&Aの流れと大きく変わりません。まず、売却の目的や条件を明確にし、必要な資料を準備します。売却の目的としては、オーナーの高齢化や健康問題による引退、後継者不在による事業継続の困難さ、業績不振からの脱却などが挙げられます。

売却条件を決める際は、希望売却価格、従業員の処遇、顧客情報の引継ぎ、競業避止義務の有無など、様々な角度から検討する必要があります。また、売却に必要な資料としては、財務諸表、税務申告書、顧客リスト、従業員情報、設備リスト、賃貸借契約書などが挙げられます。

次のステップとして、M&A仲介会社やマッチングサイトを通じて、適切な買い手を探します。その際、守秘義務契約を結ぶことで、情報の漏洩を防ぎつつ、効率的に買い手を見つけることができます。

買い手が見つかったら、秘密保持契約を結んだ上で、お互いに詳しい情報を開示し合います。買い手側によるデューデリジェンス(調査)を経て、条件を詰めていき、最終的に契約締結に至ります。契約締結後は、買い手への引継ぎ作業を行い、エステサロンの売却は完了となります。

 

エステサロンの売却金額の相場

エステサロンの売却価格は、サロンの規模、収益性、店舗の立地、ブランド力などによって大きく異なりますが、平均すると数百万円から1千数百万円程度が相場と言われています。

例えば、年商5,000万円、利益率10%、店舗面積50坪、スタッフ数5名程度のエステサロンの場合、売却価格は500万円~1,000万円程度が目安となります。ただし、これはあくまで平均的な相場であり、サロンの個別事情によって、価格は大きく上下する可能性があります。

一般的に、居抜き物件の売却金額が300万円~600万円程度であるのに対し、エステサロンの売却金額はそれより高くなる傾向にあります。これは、エステティシャンなどの人材やノウハウも一緒に引き継ぐことができるM&Aならではの強みだと言えるでしょう。

また、エステサロンの売却価格を決定する際は、「EBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)」という指標が重視されることが多いです。EBITDAは、企業の本業の儲けを表す指標であり、負債の影響を受けにくいため、M&Aの際の企業価値評価によく用いられます。

一般的に、エステサロンの売却価格は、EBITDAの3~5倍程度が相場と言われています。つまり、年間のEBITDAが1,000万円のエステサロンであれば、売却価格は3,000万円~5,000万円程度となります。ただし、これはあくまで目安であり、個別の事情によって価格は変動します。

 

エステサロンを高く売却するためのポイント

少しでも高い金額でサロンを売却するには、自社の「強み」を明確にし、買い手にアピールすることが大切です。例えば、立地の良さ、ブランド力、優秀な人材、独自の施術メニューや顧客管理システムなどは、買い手にとって魅力的な要素となります。

立地の良さは、集客力に直結するため、売却価格を大きく左右します。都心の一等地や、駅近の好立地であれば、高い売却価格が期待できるでしょう。また、ブランド力の高さも、売却価格のアップにつながります。有名雑誌やWebメディアで取り上げられた実績や、SNSでの高い評価は、買い手の関心を引く材料となります。

優秀な人材も、売却価格を高めるための重要な要素です。特に、人気のエステティシャンやスタッフがいれば、買い手にとって大きな魅力となります。引き継ぎ後もスムーズに事業を継続できる見込みがあるため、売却価格のアップにつながるのです。

独自の施術メニューや顧客管理システムも、買い手の関心を引くポイントとなります。他店にはない独自のメニューや、効率的な顧客管理システムは、事業の差別化につながるため、売却価格を高める材料となるでしょう。

また、サロンのリスク要因をあらかじめ洗い出し、可能な限り解消しておくことも重要です。買い手はリスクが少ない案件を好むため、負債や訴訟リスクは売却価格を大きく下げる要因となります。事前に対策を打っておくことが近道と言えるでしょう。

具体的には、債務の整理、法的トラブルの解消、設備の修繕、従業員との関係改善など、様々な角度からリスク要因を洗い出し、対策を講じておく必要があります。専門家のアドバイスを受けながら、着実にリスクを減らしていくことが、高い売却価格につながるのです。

 

エステサロン業界のM&Aの最新動向

国内のエステサロン業界では、大手エステチェーンによる中小サロンのM&Aが活発化しています。大手にとっては、店舗数や顧客基盤の拡大、優秀な人材の獲得などのメリットがあります。

例えば、リラクゼーション業界大手のラフィネは、2021年に美容サロン運営会社のユイルを子会社化しました。ユイルは、「BEAUT」や「BODY ARCHI」など、都心部を中心に展開する人気サロンを運営しており、ラフィネにとっては、事業領域の拡大と人材獲得が目的だったと言われています。

また、エステティックサロン大手のTBCは、2022年に同業の日本エステティックを子会社化しました。日本エステティックは、「COSMEDIX」などの人気サロンを展開しており、TBCにとっては、シェア拡大と事業効率化が目的だったようです。

一方、中小サロンにとっても、ブランド力の向上や経営ノウハウの共有、スケールメリットによるコスト削減など、大手の傘下に入ることで様々なメリットを得られます。win-winの関係と言えるでしょう。

また、業界の枠を越えたM&Aも増えつつあります。美容関連の医療クリニックによるエステサロンのM&Aや、エステ機器メーカーによるサロンの買収など、異業種からの参入も目立ちます。

例えば、美容皮膚科大手のリゼクリニックは、2020年にエステサロン運営会社のビューティーワールドを子会社化しました。医療機関とエステサロンの連携により、トータルビューティーケアを提供する狙いがあったようです。

また、エステ機器メーカー大手のヤーマンは、2021年にエステサロン運営会社のトリニティーを子会社化しました。自社製品の販売チャネル拡大と、サロン運営ノウハウの獲得が目的だったと見られています。

このように、異業種からの参入が増えている背景には、美容・健康ニーズの高まりがあります。エステサロンを核として、医療、美容機器、化粧品など、様々な分野との連携が進んでおり、業界の垣根を越えたM&Aにより、新たなシナジーが生まれることも期待されています。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。エステサロンのM&Aは、業界の競争激化や後継者不足を背景に、今後ますます増えていくことが予想されます。

売却を検討する際は、自社の強みを活かしつつ、リスクへの対策を行うことが重要です。立地、ブランド、人材、独自性など、買い手の関心を引く要素を明確にし、アピールすることが大切です。また、M&A専門家のアドバイスを受けることで、スムーズに進められるようになるでしょう。

エステサロン業界のM&Aは、売り手と買い手双方にメリットのある選択肢として注目を集めています。大手による中小サロンの買収や、異業種からの参入など、様々な形でM&Aが行われており、業界の活性化にもつながっています。

今後も、美容・健康ニーズの高まりを背景に、エステサロン業界のM&Aは活発化していくことが予想されます。業界の最新動向を押さえつつ、自社の状況に合ったM&Aを目指していきたいものです。M&Aを選択肢の一つとして視野に入れ、事業の発展につなげていくことが、エステサロン経営者に求められているのかもしれません。

 

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